
認知機能が低下すると、証券会社は原則として口座の取引を停止します。これまでの成年後見制度や一部の代理人サービスでは、本人の代わりに金融商品を売却できても、新たな購入はできませんでした。
しかし、日本証券業協会は、認知症などによって判断能力が落ちた後も資産形成を継続したいというニーズに応えるため、2025年2月より「家族サポート証券口座」制度を新設しました。これは、事前に配偶者や子・孫などを代理人に指定し、定めた「管理・運用方針」に沿って、認知症になった後も家族が本人の資産を運用できるようにする制度です。
<「家族サポート証券口座」の導入と主な流れ>
❶証券会社からの提案・説明:証券会社が顧客に制度を説明します。
❷事前相談と契約書作成:証券会社、本人、家族代理人の三者で相談し、契約書案を作成します。
❸公正証書契約の締結:本人と家族代理人が公証役場で公正証書契約を結びます。
❹本人の取引継続:本人の判断能力がある間は、本人が取引を続けます。
❺代理取引開始の通知:本人の判断能力低下後、家族代理人から証券会社へ「代理取引開始届」を提出します。証券会社は本人にもその旨を通知します。
❻代理取引の開始:これにより、家族代理人による取引が始まります。
<代理取引開始後の主なルール>
代理取引開始後は本人による取引はできません。証券会社は代理人が行う取引が代理権の範囲内かを確認し、注文を受け付けます。保有商品を売却・解約した場合、売却金は本人名義の金融機関口座に入金されます。また、取引に関わる書面は家族代理人に交付されます。
この新制度を採用するか否かは各証券会社の判断です。利用を検討している場合は、取引のある証券会社に直接問い合わせて、導入状況やサービス内容を確認しましょう。