【生命保険の落とし穴❺】受取人の変更をしなかったために起きた悲劇

Dさんは就職して間もない頃、保険会社に入社した友人の勧めで死亡保険の契約をしました。契約者・被保険者はDさん、受取人は、女手一つでDさんと弟を育ててくれた母にしました。

その後、Dさんは結婚し、可愛いお子さんにも恵まれましたが、不慮の事故に遭い帰らぬ人となってしまいました。Dさんの亡き後に死亡保険の存在を知った妻。受取人は、Dさんより前に亡くなっていた義母のままでした。受取人が先に亡くなっていた場合、受取人の法定相続人に受け取る権利が発生します。

義母の法定相続人は、相続発生時に存命だったDさんと義弟の2人です。現時点でDさんが亡くなっているため、Dさんの相続人である妻と子、そして義弟の3名に受け取る権利があることが分かりました。

義母の遺産を受け取る権利は、民法上、義弟が2分の1、Dさんの妻と子がそれぞれ4分の1ずつとなります。ところが、保険金は約款による取り決めがない場合、法定相続人が平等の割合で保険金の請求権を取得することになるため(保険法46条・民法427条に基づく、平成5年9月7日最高裁判例)、義弟・Dさんの妻・子が3分の1ずつ受け取る権利を有することとなります。

Dさんが保険金の受取人の変更をしていなかったばかりに、妻子の受け取る金額が減ってしまった・・・という残念な結果を招いてしまいました。