斜線の遺言書無効

最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は、遺言者自ら斜線を引いた遺言が有効かどうかが争われた訴訟の上告審判決で、「故意に遺言を破棄したといえ無効」とする判断を示し、有効とした二審・広島高裁判決を破棄した。

遺言者は、自筆で、ほぼ全財産を長男に相続させるとした遺言を作成していたが、その後、遺言書の左上から右下にかけて自ら赤いボールペンで斜線を引いていた。

これを見たもうひとりの相続人である長女が「遺言は故意に破棄された」として、無効の確認を求めて提訴していた。争点は、「元の文字が判読できる程度の斜線」= 効力が失われない=有効とする二審に対してだったが、最高裁は「赤いボールペンで文面全体に斜線を引く行為は、一般的には遺言の全効力を失わせる意思の表れとみるべき」と結論づけ、「故意に遺言を破棄」=無効と判決された。

(2015年11月21日 日経新聞より)

遺言書を実際に使う際に、例えば、この作成に対して、本人の意思能力はあったのか?誰かが書かせたのではないか?といったことを問題にして、もめたりする場合も時々ありますが、その遺言書が有効か無効かといった判断は正直難しいです。

この判決は一定の条件下で遺言者の意思を尊重した判断として、非常に珍しいケースです。遺言書はできれば、公正証書で作成しておきましょう。