【相続事例集】にっこり

ある日、三木さんが、享年74歳で亡くなった妻の相続手続きの相談に来られ、その後手続きのサポートを行うことになりました。
亡妻との間に実子はおらず、亡妻には前夫との間に子供(Aさん)が1人いました。亡妻は、Aさんが2歳の時に離婚し、前夫に引き取られてから、一度も会うことは無かったそうです。

相続人調査の結果、三木さん自身も会ったことがないAさんは、遠方の他県に住んでおり、現在、52歳になるということが判明しました。そこで、手紙にてこの度の事情を説明し、手続きの協力をお願いすることにしました。

それから数日後、Aさんから当センター宛に電話がありました。最後までその姿を見ることなく旅立っていった亡母への想いを電話口で語られていました。特に、一度も「お母さん」と呼んだことが無い寂しさや、父に気を使い、会いたい気持ちをずっと押し殺し日々を過ごされてきたことを聞き、胸が熱くなりました。
相続に関しては、手続きに協力し財産は放棄したいというお気持ちでした。

後日、Aさんとの話を三木さんに伝えました。「大変つらい思いをされて来られたのだなあ・・・」と非常に感慨深い様子でした。三木さんによると、妻も離れ離れになった我が子のことを「元気でやっているのかなあ・・・」とずっと気に掛けていたそうです。

3ヶ月後、無事に相続手続きは完了しました。三木さんと最後にお会いした際、是非、Aさんに贈って欲しいと3枚の写真を手渡されました。1枚は、三木さんとの結婚当初の妻の姿、もう1枚は、Aさんと同じ50代の時の妻の姿、最後の1枚は、亡くなる半年前に撮った妻の姿で、「にっこり」と微笑んでいたのが印象的でした。

三木さんから預かった3枚の写真を同封し、Aさんに手続き完了のお知らせの手紙を送って1週間後、Aさんから手紙が届きました。かけがえのない母の写真を相続出来たことの喜びと、母に会わせていただいた三木さんへの感謝の気持ちが綴られていました。

言うまでもなく、天国で三木さんの妻も、子供との再会を微笑み喜んでいたことでしょう・・・「にっこり」と。