被相続人の西川さま(仮称)は、28年前に結婚し、一男をもうけましたがまもなく別居し、その後ずっと実家の近所で一人暮らしをしていました。西川さまのお姉さまは、西川さまはとうに離婚していて看病してくれる人がいないと思い、生前の西川さまの看病をしていました。しかし、現実は、西川さまは離婚しておらず籍は入ったままだったのです。
西川さまのお姉さまからご相談を受けたときトラブルの予感を覚えましたが、西川さまの長年別居している配偶者とお子様は相続放棄をされたとのことで、安心しました。
その一方、当センターが手続きを進めていると、相続放棄しても奥様に企業年金を受け取る権利があるとわかりました。奥様に連絡すると「1円ももらう気はない。それよりも相続放棄したのであるから煩わせないでほしい。」とのお返事でした。
何百万円を受け取る方が未確定のまま宙に浮いた状態で、手続きを終了せえざるを得ないとも覚悟しました。その後、何とか奥様に取得して頂けることになりました。
さらに本件では相続財産が多く、相続税の支払い義務が発生しました。被相続人の配偶者の方にも、企業年金を受け取っていただいたので、相続税を一部負担いただきました。「相続放棄はすべてを放棄するものではない。」よって、遺言などで残される方の事を考えた死の準備が大切だ、このことを実感する手続でした。
現在は、西川さまのお姉さまから遺言書作成の依頼をいただいています。お姉さまは未婚で、今お亡くなりになると本件の被相続人の配偶者の子(お姉さまからすると甥)が相続人になります。お姉さまの希望により、この甥には相続させないという遺言書を作成しています。