兄弟にも権利、遺言が重要

民法は、遺言が残されていなかった場合を想定し、財産を相続する人(法定相続人)の順位や、それぞれの割合(法定相続分)を定めています。相続人全員で協議して合意すれば、これに従う必要はありませんが、財産分けについての重要な判断材料になります。

例えば、夫婦のうちの夫が先に亡くなった場合、誰が相続人になるかは家族構成によります。まず子どもがいる場合は単純で、法定相続人は妻と子どもだけです。子どもがいない場合は複雑です。

亡くなった夫の親が存命していたり、兄弟姉妹がいたりすると、その人たちにも法定相続人としての権利があるからです。兄弟姉妹がすでに亡くなっていても、おいやめいがいれば、その人たちも法定相続人になります。相続人の数が多くなれば多くなるほど、財産分けについて調整するのはより難しくなります。

これを避けるために重要なのが遺言です。兄弟姉妹には、遺言にかかわらず相続できる「遺留分」という権利がないからです。遺言を残していれば、兄弟姉妹の存在を気にすることなく、全財産を相続できます。

ただ、財産を受け取った配偶者が亡くなると、次はその配偶者の兄弟姉妹が財産を相続する権利が出てきます。もともとは夫の親が築いた財産であれば、夫の兄弟から不満が出てくる可能性もあります。

子どものいない夫婦はお互いの兄弟姉妹との関係を踏まえ、遺言を書くことが重要です。

(2015年4月8日 日経新聞より)

亡くなった方の兄弟姉妹との相続は、まとまりにくいことが多いとよく耳にします。なぜかというと、亡くなった本人なしで、義兄や義姉といった兄弟姉妹と遺産についての話し合いをしなければならないからです。

お互いが権利を主張する、考えが合わない、兄弟姉妹とあまり付き合いがなく本音で話し合うことができないといった理由で、遺産分割協議が進まないという問題が起こります。

そうならないように遺言を書いておくことが重要です。自筆証書でなく公正証書で作成しておくことをおススメします。自筆証書遺言を作成しても、いざ手続きすると無効扱いで、相続人と話し合いをしなければならないという可能性があるからです。子どもがいない方は、お元気なうちから夫婦で話し合いをし、遺言を作成しておきましょう。