Aさんは、10年以上前に亡くなった父の相続手続の相談に来られました。父は平成24年に亡くなっており、その際、母が相続すると言ってそのままになっている状況でした。母が施設に入ることになり、Aさんが母に代わり手続きを進めたいとのことでした。
話を聞いてみると、亡き父は前妻との間に子供がおり、その方たちとは疎遠で連絡が取れないと困っていました。そこで相続人を調べてみると、たしかに前妻との間に子供が二人いたようです。その一人Bさんは亡くなっているだけでなく、2回結婚しており、それぞれに子供がいる状況でした。
その後、財産を調べて他の相続人全員に手紙を送ることになりました。相続財産は預金だけで、法定相続分で分けたい旨を通知すると、全員が同意されて、Aさんもホッと胸をなでおろしていました。
しばらくして、Bさんの妻Cさんから連絡があり、「私の事覚えていますか?」と仰ったのです。何事かと思って話を聞いてみると、なんと、令和2年にセンターで開催した無料相談会に来られていた相談者だったのです。
相談メモを見てみると、亡くなったBさんの前妻の子(Dさん・Eさん)に接触するのが嫌だと考えておられ、家を売ってお金を分けてくれと言われる恐怖があったようです。Bさんの財産は自宅とわずかな預金だけで、法定相続分を要求されることを恐れ、放置していた状況でした。
しかし今回お手紙や電話でDさんEさんとやり取りをしていたので、Bさんの相続についても話をしてみると、家を売ってまで分ける考えはなく、少しの御礼金で手続きの協力をしてくれるお考えだと分かりました。
その後、父とBさんのそれぞれの手続きが終わり、Aさん、Cさん共にとても喜んでおられました。
・今回はすんなりいきましたが、手続きを放置しない
・複数結婚歴があり、相続人同士が疎遠の場合は遺言をきちんと残す
・相談のみで終了した方も後から手続きにつながることがあり、無下にしない
今回の手続きで、こうした教訓を再認識することができました。