お母様を亡くされたMさんが相談に来られました。「母の財産は預金だけですが、スウェーデン人と結婚した妹(長女)が先に亡くなっており、その子供たちが相続人となるのですが、姪っ子たちは完全に外国人なのです。どうやって進めていけばいいかわからない。」との事でした。
聞いてみると、亡長女の子アンさんとソフィーさんはスウェーデンで生まれ、日本語の読み書きはできず、国籍はスウェーデンですが現在は結婚してアンさんはオランダ、ソフィーさんはアイスランド在住でした。この時点で手続きが煩雑になることは容易に想像できたのですが、もう1つ問題がありました。
Mさんの自宅不動産が亡きお父様の名義のまま残っているとのことで、登記手続も一緒に進めることになりました。しかしお父様は長女よりも先に亡くなっており、お父様の登記手続には亡長女の夫ボブさんの協力も必要となりました。ボブさんもスウェーデン国籍ですが、スペイン在住とのことで手続きはさらに煩雑になりました。
戸籍収集や財産調査が終わり、遺産分割を進める段階になりました。Mさんは、以前からボブさんと簡単な英語でやり取りされていたそうで、ボブさんにメールをしたら嬉しい反応がありました。手続きに協力してくれること、自分たちは海外にいるので財産はMさんがすべて相続したらいいという考えであることをボブさんが知らせてくれました。
最難関である遺産分割協議はクリアできましたが、外国籍で海外在住の相続人は協議書に実印の押印ができず、サイン証明書も取得できないため、手続き書類準備の壁が立ちはだかりました。
手続きの方法として協議書の代わりとなる宣誓供述書(相続人であることや分割内容を記載した書類)を作成し手続きを進めることになりました。宣誓供述書をそれぞれの相続人の在住国の公証人に依頼して認証手続が必要となります。公証人はノータリーパブリックと呼ばれ、その面前で書類に署名して、本人が署名したことを認証してもらうというものです。
相続人3人はノータリーパブリックを利用したことがなく、どうしたらいいか困惑されていました。Mさんも簡単な英語しかできず、手続きの内容をうまく説明できないとの事でした。日本語で説明するのも難しいところを英語で説明するのはさらに大変でした。
そこで役に立ったのがチャットGPTでした。言いたいことを日本語で入力し、それを英語に翻訳してもらうことが簡単にできます。文章だけこちらで作り、それをMさんにメールで送ってもらうというやり取りを繰り返し、無事に全員が宣誓供述書の認証手続を完了することが出来ました。その書類を日本に送っていただき、登記手続と銀行の解約手続を完了させることが出来ました。
登記手続きは司法書士、宣誓供述書作成や翻訳は行政書士と連携し、センターを窓口としてトータルサポートができました。また海外在住の外国籍というイレギュラーな案件でしたが、これまでのノウハウや海外相続に強い士業との連携で依頼者の負担を最小限に抑えることが出来たと思います。英語でのやり取りも昨年から話題のチャットGPTをフル活用して対応することができました。今後このような海外の相続案件は増えてくる傾向だと思いますが、自信をもって対応できるようにしたいです。