Aさん(女性)の叔父が亡くなった。妻子はおらず、両親も既に死亡しており、兄弟姉妹または甥・姪が相続人となる。Aさんの親は死亡していたため、相続人となっていた。
叔父の戸籍には「推定平成30年○月〇日死亡」と記載されていた。借家住まいであったが、最後は孤独死であったようだ。近くに住んでいたAさんは生前に会いに行ったり、色々と叔父の世話をし、一番つながりのある親族であった。
叔父の死亡時の連絡が、Aさんに来たのもそのためである。
葬式や納骨、車の廃車手続き、さらに借家退去時の清掃を業者へ発注するなど、死後の諸手続きも、Aさん1人が費用合計約80万円を全額出して行った。
遺産は預貯金の約1,000万円だけである。
Aさんからは、直接連絡を取れる相続人ばかりではなく、親族を通じてしか連絡を取っていない者もいると聞いていた。
そこで、本人から一度手紙を送ってもらった後、当センターから連絡をとり、遺産の分配については「預貯金からAさんが立て替えた金額を控除し、その残額を法定相続分で分ける」ことで相続人全員が合意した。
各相続人への挨拶状には、すべての情報を開示するため、預貯金の残高証明書のほか、Aさんがこれまで立て替えた領収書のコピーも同封した。
相続人の中には、成年被後見人であるため家庭裁判所の事前承諾が必要な方や、遺産分割協議書の郵送のやりとりの途中で急に亡くなった方がいたこともあり(二次相続の手続きが必要となる)、Aさんの依頼から遺産の分配まで約半年かかった。
遺産の分配が終わり、各相続人に完了報告書を送った数日後、ある相続人から、借家の清掃代は必要だったのか、本当にかかったのか、との問合せがあった。
その相続人は遠方に住んでおり、叔父とは疎遠であったのだろう。また、Aさんとはあまり関係が良くないようであった(従兄妹であるAさんのことをフルネームで呼んでいた)。
私は、領収書があることやAさんとの面談時の印象から、おそらく本当でしょう、と答えた。相続人間の信頼関係が微妙なのは、私が知りえない、これまでの様々な事情があるからである。しかし、Aさんが費用を立て替えて手続きを行ってきたからこそ相続手続が完了できたことを考えると、領収書を見てもやはり疑ってしまうのだろうか、まずは感謝する気にはならないのだろうか、と複雑な気持ちになった。