【相続事例集】いくらたくさんの財産があっても相続しません

『私は相続人ではないのですが、これからどうしたらよいのでしょうか』とAさんが相談に来られました。

話を伺うと、亡くなられたのはAさんのお兄様。お兄様には離婚後20年以上全く行き来のない子供さんが2人いらっしゃるそうです。

晩年、お兄様の面倒を見ていたため、税務署、役所、取引先などから相続手続きを早く行うようにと言われ、Aさんは困り果てていました。Aさんが管理していた財産内容を確認すると、相続税申告の必要もありそうです。

この時すでにご逝去から7か月が経過していました。まずはなによりも相続人とコンタクトを取ることが先決ということで、行政書士に相談し、相続人に対して管理している財産の引き渡しをしたい旨の内容証明を出しました。

内容証明を出して1週間後、Aさんの元に、相続人からの連絡がありました。その内容は残念ながら『父とは一切関係ない。たとえ何億あったとしても一切関係ない。』とのこと。

生前のいきさつは分かりませんが、相続人であること、今後の手続き等についてご説明をさせていただくと、相続放棄をしたいとのことでした。

司法書士の協力のもと、子供さんたちはみな家庭裁判所にて相続放棄をしました。この時、すでに相続税申告までの期限は残り2か月。予め税理士と相談し、前順位が相続放棄をした場合の申告期限について税務署に確認を取り、相続放棄の完了から10ヶ月にしてもよいとの回答を得ていたため、慌てることはなかったのです。

しかし、この回答が来るまでにはとても時間がかかりました。

なぜならば、相続税申告が必要なほどの財産を持った方の相続人が放棄をすることを税務署は想定していなかったようです。また、管轄税務署では前例もなかったのです。

次にAさんらを困らせたのは、Aさんたちが相続人となったことでした。皆さん嫁いでおられ、実家の姓を継ぐ方はいらっしゃいません。また、自宅から1時間以上も離れた田畑を、70代の自分たちが今後管理していくことができるのかという不安です。

Aさんらも相続放棄をすることもできたのですが、Aさんらは実家を守っていきたいという気持ちが大変強く、30ヶ所ほどの田畑をそれぞれが相続することにし、相続税申告、納税も期限内に何とか済ませることができました。

その後の土地の活用については、農業委員会や農協と相談し、売却をしたり、貸したりする目途も立ち、Aさんらは『やっと安心した、もっと早く相談したらよかった』と言ってくださいました。

家族の在り方は様々ですが、Aさんらはとても家族や実家や供養を大切に考えておられ、相談員も『この気持ちが相続なんだ』と改めて実感しました。

 

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代表の米田貴虎(よねだたかとら)です。

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ここまで読んでもらって、申し上げにくいことですが、お伝えします。
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