【相続事例集】余命告知と最後のラブレター

数年前にお父様の相続手続きをお手伝いさせていただいたAさんから、突然の電話がありました。
「少し相談したいことがあるのですが・・・。」Aさんの声は少し元気がないように思われました。

相談当日、Aさんは「実は、先日余命の告知を受けました。先々のことが心配で相談にきました。まだ母が健在で、自分の亡き後、弟や子供たちがどうなるのかを聞きたくって。」とおっしゃいました。

家族状況や財産のことを伺い、アドバイスをさせていただく中でAさんは「少し理解ができました。いっそのこと遺言書を書こうと思うのですがご協力いただけますか?」と。

自筆証書遺言のデメリットをお話ししたところ、ぜひ公正証書遺言を作成したいと決意をされたAさん。その後公証人とのやり取りなどを経て、Aさんは3月14日のホワイトデーに遺言書を完成することになりました。

「妻にいいプレゼントになるかな?」と疲れた表情ながらニッコリ笑って言われたのが印象的でした。

それから一月半ほどして、奥様からお電話がありました。Aさんが亡くなり遺言書による相続手続きを手伝ってほしいと・・・。お聞きしていた余命の期間よりもあまりにも早い時期のお電話でしたので少し驚きながらお話を伺いました。

Aさんは、すい臓がんのため余命告知を受けられ、その後も治療に専念しつつ働き始めたばかりの第2の職場で仕事に励んでいたようです。これからセカンドライフを満喫しようと夫婦で相談し始めた時の余命告知だったようです。

Aさんは遺言の中で、奥様の生活を第一に考え、2人の子供たちが奥様を大切にしてくれるように遺産の配分を決めておられました。長男の家系として先祖代々の祭祀の継承を息子さんに依頼をされていました。年老いた母の世話のための資金についても配分を考え、実弟に依頼をされていました。

そして何よりもこの遺言書を書いた意図と家族への感謝の気持ちを、付言として残されました。

手続きのお手伝いにあたり、ご家族がそろったところで遺言書をみなさまに見ていただきました。ご家族の皆さんは、Aさんが遺言書に込めた気持ちを十分にくみ取り、かえってほっとしたご様子で遺言書を眺めておられました。この時ほど付言の重要性を認識させていただいたことはなかったと思います。

1ヶ月ほどして相続手続きが全て終わった際に遺言書の日付をみた奥様は、「人生の中で一番のホワイトデーの贈り物でした。」とおっしゃいました。Aさんも今頃天国でにっこりと微笑んでおられる事でしょう。

 

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