大塚さん(仮名)から、お姉さん(A子さん)の相続手続きに関する相談を受けました。
事前調査の結果、相続人は異母兄弟のみで、代襲相続人を含めると11人おり、相続財産は不動産(他県に所有)と預貯金であることが判明しました。
その後、法事で集まった際に遺産分割協議が行われ、相続財産は相続人で均等に分けるということで一旦は、まとまりました。
しかし、遺産分割協議終了後、数名の方が帰られた後の雑談の中で、相続人B(代襲相続人)さんは生活保護を受けていることが判明しました。相続人の一部の方からは、「Bさんが相続すると生活保護が打ち切られるので、Bさんに相続放棄してもらってはどうか?」という意見もあり、結果として「他の相続人の取り分も増えるので、相続放棄してもらいましょう。」ということになりました。
当センターの過去の事例を参考に、担当者が大塚さん、Bさんと一緒に市役所に行き、生活保護受給者の相続放棄について相談を致しました。その結果、生活保護法に基づくと、「資力を優先する旨の条項」があり、相続放棄は出来ないこと、遺産を相続し、生活保護を辞退しなければならない可能性がある、ということを伝えられました。
(注:生活保護者の相続放棄に関する取扱いは、市区町村によって差異があるため、事前に役所に確認しておくことが必要です)
後日、改めて相続人が集まり、そのことを伝えるとともにBさんに遺産相続をしてもらい、相続後に生活保護については市役所と相談することでまとまりました。
たまたま雑談から生活保護を受けていることが判明した例ですが、今回のように相続人が多い場合や普段の付合いがあまりない相続人同士の場合には、相続人が保護受給者か否かを確認することは難しいこともあると思います。また、市役所との話合いをする中で、生活保護者に相続放棄をすすめるケースもあることがわかりました。
異母兄弟の相続、他県にある不動産対応等、相続財産だけが複雑な課題であると思っていた中で、意外なところに思わぬ課題がひそんでいることを実感したケースです。
(費用返還義務)
第63条 被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。