【最新法改正対応】はじめての遺言書作成で失敗しないための5つの重要ポイント

「遺言書なんて、自分にはまだ早い」「うちは家族仲が良いから大丈夫」——そう思っていませんか?

実は、遺言書がないために親族間で遺産分割協議が難航するケースは後を絶ちません。特にお子様がいないご夫婦、一人暮らしの「おひとりさま」、あるいは内縁関係や先妻・後妻のお子様がいるなど家族関係が複雑な場合、遺言書がないことで残された家族が多大な労力と精神的負担を強いられるリスクがあります。

2019年以降、日本では約40年ぶりとなる相続法の大改正が行われ、遺言書作成のハードルは劇的に下がりました。

本記事では、相続実務の専門家の視点から、最新の法改正と現場で陥りやすい注意点を踏まえた「失敗しない遺言書作成」の重要ポイントを5つに絞って解説します。

ポイント1:自筆証書遺言の「財産目録」はパソコン作成が可能に

これまで「自筆証書遺言」は、全文を自筆で書く必要があり、特に財産が多い方には大きな負担でした。しかし、現在は財産の内容を記す「財産目録」のデジタル化が認められています。

本文は引き続き手書きが必要
「誰に何を相続させるか」という遺言の核心部分は、必ず本人の手書き(自書)でなければなりません。

目録のデジタル化・コピー添付が可能
財産目録はパソコンで作成できるほか、通帳のコピーや不動産の登記事項証明書をそのまま添付することも可能です。

【重要】署名・押印のルール
偽造防止のため、パソコン作成の目録やコピーであっても、全てのページの表裏それぞれに署名と押印が必要です。

修正時の注意点
デジタル作成した目録を差し替えるなどの訂正を行う場合は、単に差し替えるだけでなく「旧財産目録を新財産目録にする」旨を手書きし、新目録の全ページに署名・押印する必要があります。

ポイント2:「法務局の保管制度」を活用して紛失・改ざんを防ぐ

2020年7月から始まった「自筆証書遺言書保管制度」は、自筆遺言の弱点(紛失や改ざんのリスク)を克服する画期的な制度です。

1. 紛失・破棄のリスク解消
遺言書の原本は法務局で厳重に保管され、同時に画像データ(PDF)化されます。そのため、法務局へ提出する際は「無封(封をしない状態)」で持参する必要がある点に注意してください。

2. 家庭裁判所での「検認」が不要
通常の自筆証書遺言に必要な「検認(内容確認の手続き)」が免除されるため、死後の相続手続きを数ヶ月単位で早めることができます。

3. 形式チェックと死亡通知
法務局の保管官が日付や署名の有無を形式的にチェックしてくれます。また、2023年10月のアップデートにより、遺言者の死亡時に通知を送る対象者を最大3名まで指定できるようになり、より確実に遺言の存在を家族に知らせることが可能になりました。

ポイント3:不公平な遺言でも安心?「遺留分」は金銭解決が原則に

特定の相続人に多くの財産を譲る遺言を書く場合、他の相続人が最低限の取り分を主張できる「遺留分」への配慮が不可欠です。

改正により、以前の「遺留分減殺請求(現物を取り戻す権利)」から「遺留分侵害額請求(お金を請求する権利)」へと性質が変わりました。これにより、不動産や自社株が共有名義になって事業や生活が立ち行かなくなるリスクを回避できるようになっています。

項目 改正前(遺留分減殺請求) 改正後(遺留分侵害額請求)
解決方法 原則として「現物」の返還(不動産が共有になる等) 原則として「金銭」での支払い
事業への影響 資産が細分化され、事業継続が困難になるリスク 資産を分散させず、お金で解決が可能
支払猶予 特になし 裁判所に申し立て、支払猶予(期限許与)を得られる可能性がある

ポイント4:「遺言執行者」を指定して確実に遺志を実現する

遺言の内容を具体的に実行する「遺言執行者」を指定しておくことは、スムーズな相続の鍵となります。

強化された権限
特に「特定財産承継遺言(特定の資産を特定の相続人に譲る遺言)」の場合、遺言執行者は他の相続人の同意なく、単独で預貯金の解約や払い戻し、不動産の相続登記申請を行う強力な権限を持ちます。

専門家からのアドバイス
遺言執行者は就任を辞退することも可能です。せっかく指定しても拒否されては意味がないため、必ず事前に本人の承諾を得ておくことが重要です。また、指定した個人が先に亡くなるリスクに備え、法人(行政書士法人等)を指定するか、予備の執行者を定めておくとより安心です。

ポイント5:絶対にやってはいけない「無効」になる書き方

専門家の目から見て、特に注意が必要な「無効・トラブルの原因」となる事例を紹介します。

共同遺言の禁止
夫婦で一枚の紙に連名で書くことは法律で禁止されており、無効となります。

曖昧な表現と「予備的遺言」
「あげる」ではなく「相続させる(相続人に対して)」または「遺贈する(相続人以外に対して)」と書きましょう。

財産の特定不足と「漏れ」
不動産は登記簿通りに記載してください。特に、マンションの「共用部分(集会室等)」や自宅前の「私道」などは記載漏れが多く、そこだけ遺産分割協議が必要になるケースが頻発します

魔法のフレーズ「包括条項」
記載漏れを防ぐため、末尾に「その他本遺言に記載のない一切の財産は〇〇に相続させる」という一文(包括条項)を入れておくことを強く推奨します。

デジタル遺言の現状
現時点では動画や音声による遺言に法的効力はありません。

まとめ:最も安全なのは「公正証書遺言」

法改正で自筆証書遺言の利便性は上がりましたが、法務局も公証役場も「遺言内容が法的に有効か(遺留分を侵害しすぎていないか、公序良俗に反しないか等)」までは保証してくれません。最終的に裁判で有効性が争われるリスクを最小限にするには、公証人が作成する「公正証書遺言」が最も確実です

遺言制度は今後もデジタル化が進みます。2025年には「公正証書のオンライン作成」が開始され、将来的には「2名以上の証人と録画」を要件とした「デジタル遺言書」の解禁も検討されています。

ただし、どれほど制度が変わっても、「誰に何を託すか」という本質的な判断には専門的な法的知識が必要です。

個別の状況に応じた最適な遺言書を作成するために、まずは最新の情報に精通した専門家へ相談することをお勧めします