認知症者の事故責任 補償

認知症の男性による列車事故の責任をその家族が負うべきかどうかを争う裁判が話題になった。最高裁は判決で、介護する家族の監督責任について「同居する家族だからといって、ただちに監督義務者にあたるとはいえない」と指摘し、今回は家族に賠償責任がないと判断された。

しかし、認知症の患者の場合、車の運転や火の不始末などで、いつでも事故が起こるリスクがあるため、認知症の親などに適切なケアを怠れば、賠償請求を認定されるリスクがあることが浮き彫りになったともいえる。

そういう中で、個人賠償責任保険がにわかに注目を集めている。個人賠償責任保険は、自動車保険や火災保険と一緒に契約するケースがほとんどで、補償の対象は本人だけでなく、同居や同一生計の親族も含まれる。

ただ、この保険は他人の身体や所有物に物理的な損害を与えた場合に保険金が支払われるため、例えば今回のように線路内に立ち入って列車が遅れる被害が生じた場合は保険金が出ない点にも注意が必要だ。

(2016年3月5日 日経新聞より)

個人賠償責任保険の補償の対象になるのは、例えば「自転車を運転中、歩行者とぶつかってけがをさせた」、「ベランダから植木鉢を落とし、歩行者にけがをさせた」、「買い物中に陳列品を落として壊した」などです。

厚生労働省の推計では、65歳以上で認知症の人は12年時点で約460万人、25年には約1.5倍の700万人を超える見込みとのことです。

今後、認知症の高齢者が急増する中、損害保険会社各社は、補償対象を後見人や離れて暮らす親族まで拡大するなどの見直しに動いていますので、これを機に一度確認しておいてください。