親を介護したけれども・・・寄与分、明文化基準はなし

特別受益とは、相続人が亡くなった人から生前に受け取った財産のことです。

子どもがマイホームを建てる際の資金援助、大学以上の教育資金、結婚のための持参金やして支度金なのです。

いったん特別受益の相当額を遺産に戻します。それを相続財産とみなして法定相続割合とみなして法定相続分から差し引きます。

実際には、誰がいついくらの贈与を受けたのかを正確に把握するのは難しいです。

贈与の記録を残していたとしても、特別受益に当たるかどうかは、個々の家庭環境や収入・資産の状況などを踏まえて判断します。

寄与分は相続人が亡くなった人の財産の維持や増加に特別に貢献した分のことです。

親の事業を手伝ったり、つきっきりで介護をした場合などに認められることがあります。

遺産分割では、寄与をした相続人がまず寄与分を受け取ります。次に全体の遺産から寄与分を差し引いたものを相続財産とみなし、法定相続割合で分けます。

どれだけ事業の手伝いや介護をすればいくらの寄与分になるのか明文化されている基準がないため、相続人の協議で合意しなければなりません。

話し合いがまとまらないと、家庭裁判所の調停になります。ただし、介護については寄与分は認められても少額な場合が目立ちます。

介護は親族が助け合う扶養の義務の範囲とみなされることが多いです。

また、寄与分が認められるのは、法定相続人だけです。義理の親を介護しても、相続人の配偶者には寄与分はありません。

(平成28年8月13日 日経新聞より抜粋)

特別受益と寄与分は、実際の相続現場でも難しい問題です。

生前に、学費や結婚資金や、住宅購入時の援助、車を買う時に援助してもらったお金。

言い出したらきりがありません。個人的には、学費を出してもらったのは、その子が頭が良かっただけですし、悪かった子供があとから文句を言うというのは筋違いのように思えてなりません。

しかも、親が判断してお金を出したわけですから子供が決めることではありません。この類の相談を受ける時には正直こちらの気分も悪くなってきます。

過去5年間ぐらいの、お金の援助であれば考慮の余地がある気がしますが、それ以前は反映させないという法律が出来てくれないかなといつも思っています。しかもこの特別受益をいくらと計算するかという遺産の範囲を求める裁判はとても長引きます。

寄与分については、現在法改正が検討されていますが、良いことだと思います。やはり介護をきちんとした相続人が遺産をたくさんもらうというのは当たり前のことですし、扶養の義務がありながら介護をほとんど行わなかった相続人の相続分が少なくなるのは納得がいきます。

いつも相続で揉めるのは、介護をしたかしないかということが問題になります。家督相続の制度がなくなった今、一日も早い法改正が行われることを望みます。

(米田貴虎)